2012年6月6日
石田です。
先日、水族館・アクアリスト専攻の学生達と淀川の調査に行ってきました。
川岸に沿って多くの池が並んであるのを見たことありますか? この池を「わんど」と言います。
「わんど」は、ただの池に見えますが、川の生物達にとってなくてはならない生態学的に重要な役割を行なっているため、そこには魚を初めとした多くの生物が生息しています。
以前にも紹介したことのある天然記念物であるイタセンパラという魚もこの「わんど」に生息しています。というか、淀川本流には生息できず、「わんど」だからこそ生息できるのです。
淀川は、かって、「わんど」を壊してコンクリートの護岸をしたために、イタセンパラの姿が一時見られなくなりましたが、 現在は、一部地域だけですが、コンクリート護岸を壊して「わんど」を復活させたため、再び僅かにイタセンパラが見られるようになってきました。
今回の調査でも稚魚を十数匹発見できました。
アマゾン川に、淡水魚では、世界最大の大きさ(全長2~4m)になるピラルクという巨大魚がいます。
このピラルクもアマゾン川の本流ではなく、「わんど」に生息しているのです。
以前、アマゾンの現地の人によるピラルクの捕獲に同行させてもらった時の話です。
ジャングルの中を3時間ぐらい歩いて、「わんど」にやっと着いて、蒸し風呂のような暑さとヒルの襲撃で疲れたので、とりあえず「わんど」の畔で休憩です。
マテ茶を飲みながら休憩です。南米では、コーヒーよりもマテ茶を皆よく飲みます、マテ茶は最近コマーシャルで紹介されていますよね。
ブラジルはコーヒーで有名ですが、一般のブラジル人は、そんなにコーヒーを飲みません。
なぜならば、コーヒーは大事な輸出品であり、庶民のところには高価で回ってこないのです。
私達日本人は、コーヒー豆を挽きたてのおいしいコーヒーを普通に飲みますが、ブラジルでは、喫茶店でコーヒーを注文するとネスカフェのインスタントコーヒーが出てきます。皆、インスタントコーヒーを飲んでいるのですよ。
ピラルク捕獲の話に戻りますが、「わんど」の畔での休憩が何時間も続き、皆捕獲準備すら何もしなくて、ただひたすら休憩で、昼寝までしている人もいます。
のんびりとした南米人ですから、仕方ないと思いつつも、こちらはイライラしてきます。よく見ると誰一人として釣り竿や網を持ってきてる人がいなくて、ジャングル奥地に騙されて連れてこられたのではないかと不安になってきました。このままジャングルに置き去りにされたらどうしょうかと!心配で。
5時間ぐら休憩したころに、突然「わんど」の方向から「ガバッ」という大きな音が聞こえてきました。そしたら、今まで休憩していた人達が急に動き出して、皆、バケツを持って、「わんど」の水をくみ出し始めたのです。
「わんど」は水深が50cmぐらいと浅いのですが、それをどうも20人で水を汲み出し、干上がらせようとしているらしいです。浅いと言いながら、そう簡単に水は無くなりません。
3時間以上汲み出し続けて、水深が30cmぐらいなってきたら、何と暴れまわっているピラルクの姿が見えてきました。その「わんど」には2mぐらいのピラルクが2匹もいました。
そのピラルクを素手で押さえつけ捕まえたのでした。釣竿も網も必要ない漁法でした。使ったのはバケツだけでした。
捕獲の合図となった「ガバッ」という大きな音はなんだたのでしょう。
実は、ピラルクは空気呼吸もする魚で、あの音は、水面で空気を吸い込んだときの音だったようです。
「わんど」の水は濁っていて何も見えないから、休憩しながら、ピラルクがいるのかどうかを待っていたのでした。
南米らしい気の長いピラルク漁でした。
もし、その「わんど」にピラルクがいなかったら、いつまで休憩していたのでしょうか?
そのことを聞いてみたら、「No Se!」という返事が返ってきました。南米人がよく使うことばで、ノ・セと言いますが、「そんなこと知るもんか!」という意味です。
もうひとつよく使う言葉に「ノー、インポルタ!」という言葉があります。「たいしたことでないので、気にするな!」という意味です。
ペルーの飛行機に乗ったとき、シートベルトがちぎれていて使えないので、スチュワーデスにそれを伝えたら、「ノー、インポルタ」という返事が返ってきただけで、何もしてくれませんでした。