先生×卒業生・在校生座談会

福岡動物医療センターグループ院長×医療センターのトリマー・動物看護師として活躍中の卒業生

これからのペット業界に、求められるのは、動物や飼い主さんに寄り添える存在であること。

ペットを取り巻く環境が変わる中で、動物病院の在り方も診療だけでなく、サロンやリハビリ、健康管理や予防、そして癒しなど、多方面にわたってきています。その最先端の医療を取り入れる動物病院で活躍する卒業生たちが、これから必要とされるスタッフとはどういうものなのか、教育顧問の佐藤良治先生と語り合いました。

病院内のサロン、リハビリ担当動物看護師、動物病院で働く意義とは

動物看護師やトリマーの笑顔、そして信頼が、飼い主さんや動物に寄り添う医療につながります。

福岡動物医療センターグループ院長・佐藤 良治さん

佐藤
私が院長を務める「福岡動物医療センターグループ」は、福岡で開業して今年で 40周年になります。診察だけにとどまらず、リハビリセンター、トリミングのサロン、しつけ教室、ペットホテル、さらには福祉施設などに訪問するなどCAPP活動も積極的に行っている病院です。まずこの病院のスタッフで、ペットトリマー、動物看護師として活躍する2人の卒業生を紹介しましょう。
谷口(男性)
私はトリマーとして勤務して5年目になります。病院にある美容部門ですので、一般的なサロンとは少し異なり、ここでは健康管理もトリマーに重要な仕事になっています。飼い主さんから健康面のケアについて教えてくれるトリマーである…という期待感を、すごく肌で感じています。それだけに健康面の知識も必要であると実感しています。
佐藤
実際に、トリミングをしながら健康面について気づいたことはあるかな?
谷口(男性)
皮膚のトラブルを見つけることが多いですね。他のサロンで断られたという、皮膚が悪いワンちゃんがやってくることもあります。何かあってもすぐに獣医師へと引き継ぐことができる、それがこのサロンの特色にもなっていると思います。
佐藤
谷口さんは、この病院に勤務して3年目だったと思いますが、仕事にはもう慣れてきましたか?
谷口(女性)
勤務してから受付、診療・手術の補助、そしてリハビリなどいろいろなことを経験させていただいているところです。現在はリハビリセンターの担当を始めたばかりなので、先輩の指導をいただきながら、しっかり勉強していきたいと思っています。リハビリ担当の動物看護師として、ワンちゃんの骨格や筋肉のことなどを、もう一度きちんと理解しておく必要があると、日々感じています。
動物を守りたい。「お仕事体験」で…。好きに出会うチャンスはいろいろ
佐藤
2人とも、もともとはどうしてこの道を選んだの?
谷口(女性)
私は小学生の頃に猫を拾ったことが大きかったと思います。小学校の門のところに6匹捨てられていたのですが、どうしても真っ黒な猫が1匹だけ飼い主が見つからなくて…。そこで家族に「飼いたい!」とお願いして、結局飼えることになりました。
佐藤
いいご家族ですね。
谷口(女性)
もともとは犬を飼う予定でした…猫は無理だと思っていたので、飼えると決まった時には、とても嬉しかったことを覚えています。その猫はもう14歳になりましたが、病気もせずに今も元気に走り回っています。その経験から、弱い立場である動物たちを守ってあげられるようになりたいと思い、自然と動物看護師の道を選びました。
谷口(男性)
私が通っていた高校は工業科でした。高校の先生からは工業系大学への進学を勧められていたのですが、自分は高校で3年間学んだ結果、工業系にあまり興味がないなと感じていて…。何をしたいのか、まったくわからないという状態でした。
佐藤
それで、この専門学校に入学することになったのはどうして?
谷口(男性)
友達に誘われてこの学校の体験入学に行ったのがきっかけです。実は、小学生の頃に犬を飼っていたことがあって、犬もかわいいな…と(笑)。
佐藤
そうだったんですね!?
谷口(男性)
はい(笑)。私が選んだドッグマスター専攻は、トリミングや動物看護、トレーニングと幅広く学べるコースなので、在学中にその中から好きなことを見つけられれればいいな…と考えていました。もともと工業科で、手作業というか、形をつくるようなことが好きで、トリミングをするうちに楽しくなってきて。学校に入って学ぶうちに、好きなことが見つかったという感じです。
佐藤
それが今では、ペットトリマーのプロとしてこれだけ活躍できているのだから、何でもやってみないとわからないですね。体験入学に誘ってくれた友人に感謝しないと(笑)。
谷口(男性)
彼は結局、大学に進学してしまいました。その気がなかった自分のほうが入学して、この仕事をして…人生ってわからないですね(笑)。
飼い主さんに寄り添える、信頼されるプロになりたい

動物医療センター春日 谷口さん(男性)

ドッグマスター専攻卒
トリマー
福岡動物医療センターグループ
動物医療センター春日 勤務 谷口さん
カットの技術はもちろんですが、動物病院内のサロンで働くトリマーとして、犬たちの皮膚などの健康状態にも気配りができるようになりたいと思っています。最初は数少ない男性トリマーで不安もありましたが、今では多くの飼い主さんに「谷口さんなら安心」と言っていただけるようになりました。
ペットトリマー専攻について詳しく
佐藤
それぞれトリマーや動物看護師として働くうえで、ワンちゃんたちや飼い主さんに対して大切にしていることはありますか?
谷口(男性)
私が大切にしているのは、飼い主さんを心配させないよう、いつも笑顔でいることです。ワンちゃんはもちろん、飼い主さんへの接し方、会話をする言葉の一つ一つに責任を持つようになりました。
佐藤
良い心掛けだと思いますよ。トリマーさんへの要望は、年々高くなっていると思います。
谷口(男性)
はい、美容というのはきれいに仕上げるだけが仕事ではないんですよね。飼い主さんの家族構成など、ワンちゃんを取り巻く背景がわからないと、適切なアドバイスができないと感じています。それらを踏まえた上で「もっと短くしたほうがいい」といったアドバイスをしています。飼い主さんの希望をいかに聞き取れるか、状況にあったアドバイスができるかどうかが、トリマーにとって大切だと実感しています。
谷口(女性)
私は飼い主さん、ワンちゃんたちの顔を覚えるようにしています。たとえば受付に名前を書いていただく前に、こちらから「○○」ちゃんどうでしたか?」と、呼びかけられるようになりたいと思っています。
佐藤
それは飼い主さんも嬉しいでしょうね。
谷口(女性)
小さなことかもしれませんが、その積み重ねが、飼い主さんとの信頼につながると信じています。
佐藤
40年前に開業した頃は、動物病院というと規模が小さく、動物看護師が働いている病院はほとんどなかったんですよ。
谷口(女性)
そうなんですね!それは知りませんでした。
佐藤
しかし、私は開業当初から動物看護師を採用するようにしました。それは、患者さんに寄り添う立場としての動物看護師の存在は欠かせないと思っていたからです。治療の過程がどうなっているのか、相談しながら治療計画を立てることが必要な今の時代に、動物看護師の笑顔や信頼こそが大切だと感じています。
谷口(女性)
今どのような状態で、どんな治療をしていくのか、知りたいという飼い主さんは多いと思います。
佐藤
そう、それを説明するのに動物看護師のコミュニケーション能力が必要なのです。獣医師は治療に専念して、動物看護師が飼い主さんやワンちゃんに寄り添っていく、それができることが理想ですね。
学生時代の基礎や経験がいまの糧になっている

動物医療センター春日 谷口さん(女性)

動物看護福祉専攻卒
動物看護師
福岡動物医療センターグループ
動物医療センター春日 勤務 谷口さん
猫をずっと飼っているので、猫のことなら何でもわかる動物看護士になるのが目標。現在はリハビリ担当になったばかりで、日々勉強中です。動物たちの厳しい現実にも向かわないといけない仕事ですが、だからこそ弱い立場の動物たちを守ってあげられる動物看護師になりたいと思っています。
動物看護師専攻について詳しく
佐藤
2人を見ていると、学生時代に基礎をしっかりと学び、それを現場できちんと応用できているように感じています。実は2人とも、飼い主さんからの評判が、とてもいいんですよ。
谷口(女性)
本当ですか !
谷口(男性)
ありがとうございます!
谷口(女性)
この仕事をするには、コミュニケーション能力がすごく大切だと思います。専門学校では研究発表のプレゼンテーションを行う機会が多かったので、コミュニケーション能力も自然と身についてきたように思います。相手の目を見て話す、どんな状況でも話をすることができるという、コミュニケーションを行うための大切なポイントは学校で学んだように思います。
谷口(男性)
私はコミュニケーション能力をつけるために、学生時代にいろんな友達をつくることを心がけていました。イベントやクラブ活動にも積極的に参加したのですが、いろんな活動をすることで、人とのつながりが増えていき、そこでコミュニケーション能力がついてきたように思います。
佐藤
どんなクラブに入っていたの?
谷口(男性)
WANWANクラブです。犬舎の掃除のために朝早く登校することも多くありましたが、犬の飼育や健康管理に、毎日関わっていたことが、今の仕事にも活かされています。
働く一人ひとりの熱意が、動物や飼い主を救っていく

動物看護師やトリマーの笑顔、そして信頼が、飼い主さんや動物に寄り添う医療につながります。

福岡動物医療センターグループ院長・佐藤 良治さん

佐藤
日本ではペットブームと呼ばれて久しいですが、実はまだまだ思春期というか、成熟できていないと私は感じています。しつけや食事の知識は、欧米に比べてまだまだ未熟です。これからは治療ではなく、ペットの健康管理や長生きのために病院が何をするべきかを考えています。
谷口(女性)
確かに、一頭一頭を一生大事に育てようという飼い主さんが、多くなっているように感じます。
佐藤
高度な治療も必要ですが、いかに自分のワンちゃんに寄り添ってくれるかが、病院を選ぶ基準になっているのではないでしょうか。私はそのためにも、ワンちゃんや飼い主の方に寄り添う治療を行っていきたいと考えています。
谷口(女性)
私は手術室担当だった時に、そのことをすごく感じました。手術をしたワンちゃんのケアを担当したのですが、全くご飯を食べてくれなくて、フードをふやかして与えたり、種類をいろいろ変えてもダメで…。でも、ある日ムシャムシャ食べてくれるようになって!回復していく姿を一番近くで見て、感じた喜びは、忘れられません。
佐藤
手術したらそれで終了ではなく、術後の痛みをいかに取り除いてあげるのか、その後快適に暮らすために何をするべきなのか、そのアフターケアが必要です。そのための設備はもちろん大切ですが、私はここで働く皆さんの熱意が何よりも必要だと感じています。
プロになるために大切なのは失敗を恐れないこと。

診察をアシストする谷口さん(女性)

佐藤
動物たちは言葉を話せないから、苦しいときには私たちに対して反撃してくることもあります。それも受け入れてあげて、諦めないで努力し続けてほしいですね。やはり最初の頃は、うまくいかないことも多かったと思いますが、二人はどうだったかな?
谷口(男性)
実はペットトリマーとしてこの病院に入った時に、全員女性の先輩ばかりだったので、ちょっと不安がありました。お客様が来られてもトリマーと思っていただけなくて、自分に向かって「トリマーさん呼んでください」と言われることもあって…。
佐藤
男性のトリマーはまだまだ少ないからね。
谷口(男性)
はい、だからこそ自分のことを覚えてもらおうと努力しました。どうカットしたらいいか、自分から積極的に声をかけていきました。今では「男のトリマーさんは苦手だったけど、谷口さんだったら大丈夫」と言ってくださるお客様もいます。「また来ます」と笑顔で帰っていかれる瞬間が、一番嬉しいですね。
佐藤
お客様とのコミュニケーションでうまくいかなかったことはなかったの?
谷口(男性)
やはり最初の頃ですが、飼い主さんの気持ちを汲み取れず「もっとこうしてほしかった」と言われてしまったことがあります。でも、そのお客様は今もリピーターとして来てくださっています。失敗は一つの成長。「期待してくれているからこそ言ってくれている」というプラス思考が大切だと感じました。
谷口(女性)
この病院の先輩方は失敗したとしても「じゃあ、次はこうしよう」とアドバイスをしてくださる方ばかり。私も先輩たちのように失敗した時にフォローができる、後輩に信頼されるような先輩になりたいですね。
佐藤
病院で働く時に大切なのは「ケガをしない」「ケガをさせない」「逃がさない」のこの3つだけ。1年目はとにかく言われたことを覚えて実際に行動する。先輩が受け継いで行っていることは、必ず意味があるんです。だから、まずはやってみる。2年目はどんどん先輩や先生に質問して、私ならこうやりたいと考える。 3年目は教えてくれた人を乗り越えるような気持ちを大切にしてほしいですね。そしてこの病院では 3年目が終わる頃に、ハワイでの研修を行っています。
谷口(男性)
私も 3年目の時に行きました。とても刺激になりました。
佐藤
世界的な獣医師の大会があるのですが、世界の動物業界がどうなっているかを肌で感じてもらうのが目的です。次回は谷口さんが参加する番です。世界の動物業界について学んできてください。
谷口(女性)
楽しみにしています。
これからの動物病院に必要なのは健康管理や予防の意識

病院の前で佐藤院長、谷口さんとワンちゃんたち

佐藤
ペット業界はこれから「ロハス」、つまり心地よく健康的な生活をするというライフスタイルが重視されてくると思います。健康、食事、癒しの大切さ、それに合わせて私たちの職業もより専門的なものが要求されるようになってくると思います。たとえばリハビリ専門のインストラクターがいる、歯磨きを指導するプロがいるとか。特化されていくことで「あの人はこの専門だからうちの病院に必要だ」といった時代が来るように思います。
谷口(女性)
確かに健康管理、予防という意識は高まっていますね。
佐藤
健康管理や予防に関しての知識がある、その専門家になっていくことで、また仕事の幅も広がっていきます。そう考えていくと、この業界の未来は明るいと思いますよ。
谷口(男性)
私は今よりもっと技術を磨いて、飼い主さんに喜んでもらえるトリマーを目指していきます。また一般のサロンでは気づかないような皮膚の病気に気づくこと、症状にあったシャンプーなどの指導もできること、そういった部分をレベルアップしていきたいですね。
佐藤
シャンプーだけでも変わりますね。健康的な美容とは何か、栄養管理をどうしたら良いのかなどがわかるトリマーというのは、これから望まれていくと思いますよ。
谷口(男性)
はい、洗うだけで皮膚が良くなったという例もあります。動物病院ならではのトリマーになっていきたいと思います。
谷口(女性)
私は、子どもの頃から猫をずっと飼っているので、犬はもちろんですが、猫については誰にも負けない動物看護師になっていきたいですね。猫ちゃんたちとその飼い主さんたちが安心して治療が受けられるそのお手伝いができること、猫についてどんな質問をされても、飼い主さんが安心できるような説明ができるような知識やコミュニケーション能力を高めていきたいと思います。
佐藤
最後に、ペット業界を目指す後輩たちにエールを送るとすれば?
谷口(女性)
動物看護師になると、手術など大好きな動物たちのつらい治療の現場を見ることが多くなります。かわいいだけじゃない動物の現実を見ることもありますが、だからこそ、その動物たちを助けてあげたいという気持ちを大切に、頑張ってほしいと思います。
谷口(男性)
一般の方からは「毎日動物と一緒にいられていいね」とか思われがちですが、実は大切なペットの命を預かる、軽い気持ちではやっていけない仕事です。また、動物が好きという以上に飼い主さんとのコミュニケーション能力が問われる仕事です。学校で、しっかりとこのコミュニケーション能力を身につけておいてください。
佐藤
これからもたくさんの経験を積んで、成長していってほしいと思います。期待しています。