先生×卒業生・在校生座談会

姫路セントラルパーク園長×動物園の飼育員として活躍中の卒業生

大切なことは「思いやり」人も動物も笑顔になる場所に!

自然に近い環境でさまざまな動物を見ることができるサファリパーク。動物の飼育員を目指して本校で学び、夢を叶えた卒業生が、動物たちと過ごす日々の様子や心がけていることなど、仕事の魅力ややりがいなどについて、福重園長と語り合いました。

動物の魅力を人に伝える仕事に就きたい

「動物が好き」という前に、「人が好き」であることが大前提なんじゃないかな。

姫路セントラルパーク園長・福重 祥一さん

福重
こうして 3 人でゆっくり話をするのは初めてかな?
大塚
そうですね。園長はお忙しいですし、私も一日中担当の場所にいますので。
浜道
園長は、いつ姫路セントラルパークにいらっしゃったのですか?
福重
僕が姫路セントラルパークに来たのは、開園する半年くらい前。開園は 1984年3月なので、かれこれ30年くらいかな。パークはまだまだ工事中でね。動物も全然揃っていなくて、海外からやってくる動物の世話のために、羽田空港の動物検疫所に泊まり込んだりしたね。
浜道
そんなことがあったんですね。
福重
僕の実家は田舎だったので、いつも近くに動物や昆虫がいて、自然にこの道を目指していたよ。北海道にある酪農の学校を卒業して 1 年くらい経ったころ、群馬サファリパークに勤めていた同級生から「空きがあるよ」と声をかけてもらったんだよ。それから3年ほどして、「姫路セントラルパークがオープンするから」という話が舞い込んできてね。それじゃ行ってみようかな、と。今では、姫路セントラルパークで一番長いスタッフになりましたね。
大塚
思い出に残っていることは、どんなことですか?
福重
いろんな事があったけれど、やはり、生き物の誕生かなぁ。レッサーパンダの担当だった時に繁殖に成功して、双子が産まれたんだけど、母親が育児放棄しちゃって、レッサーパンダの人工保育することに。付きっきりで世話をしないといけなくてね。その頃はまだ、レッサーパンダの人工保育に成功した例が珍しかったから、いろいろとマスコミの取材を受けましたよ。テレビ番組で再現ドラマに出演したこともあったりするんだよ。
浜道
私は今、レッサーパンダも担当しているので、その話は聞いたことがあります。
福重
いまは公募したり、色々ですが、その時に生まれた双子に名前を付けないといけなくて。昔はリンリンとか中国っぽい名前が多かったけど、「そろそろ日本名でいいんじゃないか?お前考えたら?」と上司に任されて。家に帰って妻に話したら「モモタロウとキンタロウ」というので、そう命名したんです。浜道くんは、なぜこの業界を目指したの?
浜道
僕は幼いころから動物が大好きで、実は学生時代によく姫路セントラルパークにも足を運んでいたんです。サファリバスに乗るのも好きでしたが、今担当している「野生の国」にはよく来ていました。実家は兵庫県だったので、王子動物園へもかなり通いました。姫路セントラルパークには、実習に参加させていただいたのが縁で、ちょうどその頃に求人もあったり、早くに内定も頂きました。実習に参加して、実際に動物園で働くイメージが持てたことが良かったと思います。
福重
そこまで熱心だったとは知らなかったよ。
大塚
私も小さい頃から動物が好きで、小学校の頃から動物園で働くのが夢でした。高校の頃には祖父がお世話になっていたデイサービスの方々を見て、人を助ける仕事もいいなと迷った時期もありましたが、でもやっぱり、動物の魅力を人に伝えられる仕事に就きたいと考えて、この学校に入学しました。私もこちらで実習させてもらったことが就職のきっかけです。
動物の自然な姿を見せるには飼育員が気を配る事が大事

姫路セントラルパーク 大塚さん

動物園・動物飼育専攻卒
飼育スタッフ(ふれあいの国 担当)
姫路セントラルパーク 勤務 大塚さん
今はやるべきことに一生懸命ですが、充実した毎日です。動物との信頼関係をさらに深め、犬のアジリティやバードショーなどでその姿を見せていきたいと思います。
動物園・動物飼育専攻について詳しく
福重
大塚さんは、たくさんの小動物を飼育している「ふれあいの国」を担当してくれているよね。
大塚
はい。「ふれあいの国」で主に猛禽類を担当しています。バードショーでは、ハリスホークやワシミミズクを使っていますが、飛び立つ瞬間にわっと歓声がわきます。人と人との間を飛ぶだけでも迫力があるので、「かっこいい」「すごい!初めて見た」など、お客さんから歓声が上がるんです。「楽しかったから、また来るよ」という声をかけて頂いたりして、とても嬉しいですね。でもたまに、バードショーの途中で猛禽類がそのまま山の中へ飛んでいってしまうことがあります。フクロウなどは近くにいることが多いのですが、鷹は遠くに飛んでいってしまうことがあるそうです。私はまだ経験したことはないですが。
福重
飛んで行ってしまっても大丈夫なように、羽に発信機を付けてあるので、どの方角にいるかは探知機でわかるんだけど、その日のうちに見つけないと帰ってこない事もあるからね。他の動物園では施設の広さの関係などで、羽を切って飛べなくしている場合もあるけれど、なるべく自然の姿のままを来園者の方々に見て頂きたいので、ここではそのまま。鳥が勢いよくフェンスに激突し怪我を負ってしまうと危ないので、少し羽を切っている鳥や、他の園からやってきた鳥には、もともと羽が切られている個体もいるけれどね。
大塚
最近は猛禽類の他に、犬たちも担当しています。幼いミニチュアシュナウザーとキャバリアのしつけを任され、アジリティにも挑戦しています。
福重
そうだったね。大塚さんは動物との信頼関係を築くのに何か心がけていることはあるのかな?
大塚
日々のふれあいや接触回数を大事にしていますが、やっぱり餌やりだと思います。「私はいい人ですよ」と動物にわかってもらうために、餌やりはとても大事だと思います。お客さんの給仕体験も、動物と触れ合えるので、人気があります。
福重
他の動物園では専門の売り子さんが「売り餌」を提供しているところもあるけど、ここでは動物を担当している飼育員本人が、売り餌の用意もしている。動物に与える餌の量は決まっているため、売れた餌の量を計算して、通常与える餌の量を調整するなど、飼育員が行う仕事は多岐にわたるよね。トラの餌やり体験など他の動物園では味わえないようなこともやっていますし、特に触れ合いができるエリアでは、来園者と動物の距離がとても近くなっているから、そのぶん、飼育員がお客さんに注意を払わないといけない事も多い。
浜道
そうですね。僕は「野生の国」の担当ですが、カピバラや色鮮やかなインコなどの動物が間近に感じられるとあって幅広い層に人気があります。でも色々と気を遣うこともあります。例えばリスザルは、ベビーカー連れのお客様を見ただけで、木からすーっと降りてきます。ベビーカーのどこかにお菓子があるって、これまでの経験で知っているんです。そんな時はリスザルよりもインコよりも早くお客様の様子に気を配らないといけないんです。中にはお菓子を手に持って入ってくる人がいたりして。動物たちが気付く前に、「見えないところに隠してください」って、お客様にお願いしに走るんです。
全員
(笑)。

動物の魅力を伝えるためには、まず自分がその魅力をよく感じること。

姫路セントラルパーク園長・福重 祥一さん

福重
リスザルなんかは、ベビーカーの下に隠しているお菓子も、ちゃっかり狙っていたりするからね。「動物を放し飼いにしているから、飲食はご遠慮ください」と表示しているけど、お客さんはそれを見落としていることも多い。ウォーキングサファリだと、人と動物が檻の中に一緒に入っているような場所だから、いろいろ気を配らないとね。
浜道
本当にそのとおりです。子ども達が喜ぶ姿を見られるのはうれしいですが、掃除をしている時も動物たちの行動が気になります。
福重
今の飼育員は動物の世話をするだけでなく、動物を介して「お客さんを喜ばせたい」というサービス精神が大切です。飼育半分、接客半分。 ホワイトライオンの赤ちゃんが生まれ、先日まで「双子の赤ちゃんと記念撮影」という企画も大好評でした。パークでは、他にもたくさんの催し物を行っていますが、二人はどうですか?
浜道
僕の担当しているなかでは「カピバラ温泉」は人気がありますね。カピバラは熱帯雨林の川沿いに生息する動物だから、あったかい温泉が大好きなんです。やぐらをたてて薪焚きして、露天風呂風にと本格的で、「湯」ののれんも掛けたりして(笑)。
福重
カピバラ温泉は、冬の名物になったよね。
浜道
カピバラは特にファンが多くて、それを見るためだけに来園されるお客様もいらっしゃいます。
福重
お客さんの中には、何かの動物に特化した目的で何度も来園される方もいて、受ける質問もかなり専門的だったりするよね。お客さんの中には、落ち込んでいる時に横浜の動物園でレッサーパンダの愛くるしい姿に元気をもらってから、その姿に惹かれて「この子の親はどこにいるのかな?」とルーツを探した末に、うちにお越しくださったりね。

浜道さんとカピバラたち人気のカピバラ

大塚
それはすごいですね。
福重
そのお客さんからその子の家系図を見せてもらった時は驚きましたよ。
浜道
カピバラも熱烈なファンがいらっしゃって、温泉で身を寄せ合ってあたたまる姿は、お客様のブログでもよく紹介されています。いろいろな質問を受けるうちにお客様と顔見知りになり、親しく声をかけてもらえることも楽しみのひとつになりました。
大塚
私は去年、生まれたばかりの赤ちゃんばかりを集めた「こども展」というイベントに関わらせてもらいました。うちの赤ちゃんたちだけではなくて他の動物園からも受け入れたりで難しかったですが、とてもやりがいがありました。学校で小動物の飼育をした経験がそこで役立ちましたね。ハリネズミの赤ちゃんは、 10g ほどで生まれてくるんですけど、本当に小さくて、とってもかわいいんですよ。この赤ちゃんの可愛さはおススメです。
福重
ハリネズミの子どもはホントにかわいいね。まるで金平糖を少しだけ大きくしたみたいで(笑)。
大塚
そうなんです、私はハリネズミが一押しです(笑)。命を育むことは毎日が感動の連続で、飼育員になれて良かったと心から感じられます。
動物も人の世界もあいさつ」からはじまる

姫路セントラルパーク 浜道さん

動物園・動物飼育専攻卒
飼育スタッフ(野生の国 担当)
姫路セントラルパーク 勤務 浜道さん
サファリパークは何度通っても、新しい発見があります。飼育員と顔見知りになると、さらにおもしろい所になります。気軽に話しかけてみてください。
動物園・動物飼育専攻について詳しく
福重
学校でもっと勉強すればよかったと思うことはある?
大塚
就職してすぐのころ、動物の採血結果を見て、腎臓か肝臓かどこが悪いのかわからず、必死に調べたことがあります。学校であった「動物看護」の授業で習ったはずなんですけど、忘れてしまっていて。学生時代にもっと勉強しておけばよかったと思います。
浜道
僕も「獣医学」の授業をちゃんと勉強しておけばよかったと思うことがあります。逆に今でも活かされているのは「ズーロジカル」のゼミ。先生からガイドの手法を学び、実際にガイドも経験させてもらいました。とても楽しかったし、今、お客さんの質問に答える時にも役立っています。
福重
学校では様々なことを勉強ができる環境があるのでいいね。動物の命を預かる上で「気になることを調べる」ってことが必要に迫られる時があるから、机に向かう時間も貴重だよ。この動物は本来、どこに生息し、どんな習性があるのか?土の中にはどんな寄生虫がいるのか?この草木の名前は何?など、知りたいことが次々出てくるからね。動物が好きっていう気持ちが、「もっといろいろ知りたい」につながっていくんじゃないかな。
浜道
園長は、僕たちが伺った実習の際、どのようなポイントを見ておられたのですか?
福重
飼育員は動物が好きという前に、人が好きであることが大前提ですから、やはりコミュニケーションが大事だね。
浜道
はい、人とのコミュニケーションは大切です。お客様とも接する機会も多いですし、一緒に働くのも人ですから、コミュニケーションの大切さは普段から実感しています。
福重
あいさつが肝心なのは、動物も人の世界でも同じだと思います。動物のあいさつは、相手の攻撃を避けて、友好関係を育んでいくための行動。動物同士で鳴き交わしたり、頭をすり寄せたり。なので、こちらがサインを送ると、動物は返してくれるんです。あいさつは、見知らぬ相手と打ち解けるための第一歩。大塚さんも浜道さんも、実習中の明るいあいさつが好印象でした。
大塚
ありがとうございます。
浜道
あいさつはバッチリだと思います(笑)。
福重
実習は、就職につながるアピールの場です。我々は実習生が動物とどう接しているのかより、あいさつや笑顔、コミュニケーション力などの一般的な面を見ています。姫路セントラルパークには「猛獣ゾーン」、「大型草食ゾーン」、「草食ゾーン」、ウォーキングサファリの「野生の国」と「ふれあいの国」と全部で5つのゾーンがあります。それぞれチームで動いているから、人とのつながりは、やはり大事。だから、各セクションの担当者に意見を聞くこともあります。
「生と死」に向き合い、動物の命について考える

ワイトライオンの赤ちゃんをだっこする浜道さん、大塚さん生後3ヵ月のホワイトライオン

浜道
動物を飼育する上では仕方のないことですが、僕がずっと世話をしてきたワラビーがカンガルー病で死んでしまった時はかなり落ち込みました。獣医さんに看てもらった時には手遅れで、顔の半分がぱんぱんに腫れて弱っていたんです。小動物は体調が悪くなった次の日にはすでに手遅れということもあるし、日ごろの観察が命に直結することを身をもって感じました。先輩は「そのうち慣れるから」とやさしく励ましてくれましたが、動物は言葉を話せないので、小さな変化に気付くことが、飼育員として大事なことだと実感しました。
福重
よく分かるよ。動物は「具合が悪い」って話してくれるわけじゃないから、「もう少し早く異変を見つけられたら」と悔やむ気持ちが湧いてくるよね。でもその気持ちが必ず次につながるから。悲しいということは、それだけ動物に愛情を注いでいたってことなんじゃないのかな。動物は自然界では、弱っている姿を見せると天敵に狙われる恐れがある。だから人間の前ではわざと元気を装うことがある。人が近くにいなくて、モニターを通して観察していると明らかに具合が悪そうなのに、中に入って近づくといつもの調子で振る舞ってみせたりね。
浜道
でも逆に、命の誕生に立ち会えるのも、飼育員としての喜びです。今年の4月と10月にカピバラが出産しで現場がにぎやかになり、元気な赤ちゃんの世話をすることでとても救われました。飼育員は動物の命を預かる仕事だということをいつも心に留め、動物たちの変化に気をつけていきたいと思います。
大塚
私が担当しているフクロウやミミズクなどの猛禽類は、顔の表情がとても読み取りにくいんです。だから、餌の食べ具合や、便の状態、体温を計ることに努めています。インコはまだわかりやすい方かもしれません。
福重
「ゾウの時間、ネズミの時間」っていう有名な本を知っている?そこには動物の大きさが違うと流れる時間も違うと書いてある。ゾウは成長して出産するまで、人と同じぐらい時間がかかるけど、ネズミは出産が早い。同じ地球上に生きていても、それぞれに独自の時計があり、与えられた命があるということかな。そう考えると、確かにゾウなど長生きする動物は信頼関係を築くまでに時間がかかるし、飼育員はそれぞれのペースに合わせて順序を踏みながら向き合っていかなければいけないね。
動物と人が笑顔になる、幸せになる

たくさんのワラビーたちと福重園長、浜道さん、大塚さん。たくさんのワラビーたち

福重
2人のこれからの夢や目標を聞かせてもらえるかな?
浜道
動物は、そこにいるだけで元気を与えてくれる存在で、見ていると自然と笑顔になったり、場が和んだりします。僕にとってかけがえのないパートナーだと思います。僕自身がこれまで動物園に足を運んでずっと抱いてきた感動を、より多くの人と共有できるように工夫を重ねていきたいです。
大塚
動物にはたくさんの魅力がありますが、私はまだ全てをお客さんに伝えきれていないと思います。ユニークな動き、かわいい仕草、動物本来の生態など知ってほしいところは色々あります。言葉を喋れない動物の立場になって気分を察したり、目を輝かせて見つめる人たちの気持ちに自然と応えられるような飼育員になりたい。思いやりの心を大切に、将来的には動物が人にもたらす癒しの力にも目を向けていきたいと思います。
福重
これからの活躍を期待していますよ。