先生×卒業生・在校生座談会

粟津先生×動物園の飼育員として活躍中の卒業生

動物園は感動を伝える場所、人と動物をつなぐ存在になろう。

様々な種類の動物が集まり、子供から大人までが楽しめる動物園。そこで働く飼育員を目指して学び、夢を実現した卒業生が、この道に進んだきっかけや仕事の魅力、飼育員として大切にしていることなどを、副校長・粟津邦彦先生と語り合いました。

動物が好き!その気持ちが今の自分につながった

飼育員に必要なのは高いコミュニケーション力。動物の魅力を人びとに伝えよう。

大阪ECO副校長・粟津邦彦先生

粟津
みなさんは動物園で、現在どんな動物の世話をしているのかな?
池内
私はトラやライオンなどを担当しています。ふれあい体験やスクールなどの企画も一から自分たちで考えて提供しています。
浅川
僕はサファリパークでキリン、シマウマなどの草食動物を担当しています。
海道
私はおもにフラミンゴなどの鳥類全般と、草食動物を担当しています。
粟津
みなさんが担当している動物の種類だけでも、とてもバラエティに富んでいますね。
海道
そうですね。私のいる園でも鳥類だけで30種以上、全体では80種近くの動物たちに会えるんですよ。
粟津
動物好きに魅力的な職場だね(笑)。ところでみなさんは小さい頃から動物が好きで、飼育員になりたいと思っていたんですか?
浅川
僕は昆虫や魚が大好きだったんですが、家族は生き物が嫌いで絶対に飼わせてもらえなかったんです。動物番組を見ていても途中で消されたりして(笑)。だから高校時代に動物系の専門学校の存在を知った時は、これだ!と思いましたね。「飼育員になれば、やりたかったことを仕事にできる!」というのが、この道に進むきっかけでした。
池内
私は逆で、家では猫や犬を飼っていたし、田舎だったので普段からいろんな生き物と自然にふれあえる環境で育ちました。
粟津
動物園の飼育員になりたいと思い始めたはいつ頃?
池内
中学生の頃から将来は動物関係に進もうとは思っていたんです。当時テレビで動物をテーマにしたクイズ番組があって、その中に出てくる野生動物のドキュメンタリーに感動して、よく泣いていたんですよ。動物に関わる仕事をしたいと思うようになったのは、その影響ですね。
海道
私はアゲハチョウを卵から育てたり、捕まえてきたイモリやザリガニを観察したりするのが好きな子どもでした。その中で自分が気づいた事や知った事を、人にも教えたいという気持ちがすごく強くて。
粟津
飼育員の仕事は、まさにその延長だったわけだ。動物に関するさまざまなメッセージを伝えるのは飼育員の大事な役割だからね。子どもの頃から「動物が好き」という気持ちが、みなさん今の仕事に繋がっているんですね。
楽しい仲間たちと一歩ずつ夢に近づいた学生時代

みさき公園 池内さん

動物園・動物飼育専攻卒業
飼育員
みさき公園 勤務 池内さん
昔から地域の方に愛されている動物園で、子どもたちが動物を通して学びを体験してくれるのが喜びです。落ち込むこともありますが、モチベーションを失わないことが大事ですね。“動物のためにできることがきっとあるはず”“きっと何かを変えられる”と信じて。20年後30年後も飼育員を続けていたいです。
動物園・動物飼育専攻について詳しく
粟津
大阪ECOに入学して、まずどんなことを感じました?
池内
動物園の飼育員を目指すという同じ夢を持つ人たちが集まっているのが良かったです。
浅川
そうですね。クラスメイトはみんな動物好きなので、話が合うのも嬉しかったです。通じ合える仲間がたくさんできました。
粟津
卒業後も連絡は取り合っているの?
浅川
はい。仲間が飼育員として全国の動物園にいるのは心強いし、財産だと思っています。情報交換もしていますよ。
粟津
印象に残っている授業はある?
浅川
動物病理学ですね。学生の頃は大切さがよく分かっていなかったんですが。飼育員になってから「もっとしっかり勉強しておけばよかった」と思った授業です。
池内
私も、授業で習った内容がどれだけ大切だったか、今になってよく感じます。
粟津
現場に出て初めて実感できることも多いんです。だから学校内だけでなく、学生にはできるだけ多くの現場も体験してもらえるようなカリキュラムになっています。
池内
実習にたくさん行かせてもらえたのはすごく良かったです。私はファームゼミで、毎週通ったワールド牧場での実習が大好きで、直接飼育員さんとも親しくなれましたし、「あの実習生いいね」と言われたくて仲間と競い合っていました(笑)。現場の仕事に参加できるのが、とにかく楽しかったです。
粟津
浅川君が選んだキーパーゼミでは学校で飼育している動物の世話をしているから、一年中ほぼ毎日学校に来ていたよね。お正月休みもなかったでしょう?
浅川
飼育がしたいという念願が叶って(笑)。動物は365日、責任をもって餌やりや掃除などの世話をしないといけません。でも用事のある時なんかは、ゼミのメンバーで当番を交代したりして、うまく助け合ってやっていました。
粟津
学校には50種以上の動物がいるし、飼育は楽しいよね。海道さんはズーロジカルゼミでしたね。動物の展示や解説の方法を学んで、実際にガイドしたんですよね。
海道
天王寺動物園で「チュウゴクオオカミ」のガイドをしました。観察して気づいた点も盛り込んで、自分で個体の特徴を識別する表を作ったんです。お客様がそれを見て興味を持ってくださった時は、すごく達成感がありました。
粟津
実習も含め在学中にいろんな動物園を見たわけですが、その中で今の就職先はどうやって決めたんですか?
池内
私は観光牧場、サファリ、動物園のどれに進むか、最後までずっと迷っていたんです。そんなとき、キャリアセンターの先生にみさき公園を勧められて行ってみたら、お客様との距離が近く、のんびりした雰囲気にすごく惹かれました。ここが私の場所だ!って。
粟津
運命の出会いですね。就職してみて、思っていたとおりの職場でした?
池内
そうですね!イベントを企画すると、いつも地域の子どもたちが喜んでくれますし、子連れのお母さんが「私も小さい頃に遠足でよく来たわ」なんて言って下さったり。地元の方に愛されているのを感じながら働いています。
浅川
僕は最初からサファリパークが希望だったので、今の職場から採用実習の募集がきたとき、すぐに応募しました。
粟津
飼育員さんの場合、実習中に「あの学生いいね」と評価されて、それが就職につながるケースも多いけれど、浅川くんも?
浅川
そのときの実習期間は1週間だったんですが、自分からあいさつをしたり積極的に質問をするなど、やる気と一所懸命な姿勢を見てもらえるように努力しました。
海道
就職活動でいろんな現場に行くことは、いい勉強になりますね。将来飼育員になったときに決して無駄にはならないと思います。
粟津
そういう気持ちがあれば、自分に合った活躍の場は、必ず見つかると思います。
コミュニケーションを大切にいのちの温かさを知ってもらおう

とくしま動物園 海道さん

動物園・動物飼育専攻
飼育員
とくしま動物園 勤務 海道さん
一度は大学に進学しましたが、動物園で働きたいという夢を諦められず、大学を辞めてこの学校に入学し ました。飼育員としては経験も浅く、まだまだ目の前のことで精一杯の毎日です。子どもたちだけでなく大人にも気軽に立ち寄ってもらえて、動物の魅力を感じてもらえるような動物園づくりを目指して頑張っています。
動物園・動物飼育専攻について詳しく
粟津
ドッグトレーナーやトリマー、動物看護師など、世の中には動物に関わる様々な仕事がある中で、みなさんが動物園飼育員を選んだ一番の魅力って何でしょうか?
海道
何よりも、動物の種類がすごく豊富なことです。普通は扱えないような珍しい動物や大型動物の世話ができますから。
池内
たくさんの種類の動物にかかわって、深く知る楽しさがあると思います。例えば私はツキノワグマも担当していて、餌にするドングリの種類や冬眠のメカニズムなどを研究しています。それがクマたちの健康と長生きにつながるので、やりがいも感じます。
海道
分かります。私も今、カピバラにいろいろな餌を試していて、一頭一頭の好みを知っていく過程がとても面白いんですよ。
池内
担当が変わるとまた違う動物のことを学べるので、興味の尽きることがないですね。
浅川
飼育員は動物のすべてを間近に見て、深くかかわる事ができます。餌の管理から飼育環境や繁殖、展示手法まで、動物の魅力を引き出せるかどうかは飼育員次第ですよね。それを自分で考えて構築できるのがこの仕事の醍醐味ですし、喜びを感じるところです。
粟津
動物のコーディネートをするという事だね。
浅川
僕は飼育員になってすぐローンアンテロープというレイヨウの人工哺育に携わりました。当時は無我夢中でしたが、今振り返るとすごい体験をさせてもらったな、と。臆病で人間になつかない動物なのに、その個体は今でも僕にだけは近寄って来てくれるんです。
粟津
それはすごいね。動物園の飼育員さんって、言葉の通じない動物とコミュニケーションをとれる“特殊能力”があるんじゃないかな。そこにみんな憧れるんですよ。
池内
動物だけでなく、お客様に対してもスタッフ同士でも、コミュニケーションは一番大事だと思っています。
粟津
特に今の動物園飼育員には、人と交流する能力が求められていますよね。最近の学生には、動物は好きだけど人と話すのは苦手という子もいますが。
海道
そういう人は、まず挨拶から入ればいいと思います。挨拶ができれば、だんだん人に話しかけられるようになって、そしてお客様にも解説を聞いてもらえることにつながります。
池内
私も以前は子どもと接するのが苦手でしたが、経験で子どもの“ツボ”が分かってきました(笑)。動物とのふれあい体験でも、まず子どもたちの緊張をほぐす事から始めます。最初は怖がっていた子が笑顔で帰っていって、また来園してくれると本当に嬉しいですね。
粟津
昔の飼育員は動物の世話だけをして満足しているタイプが多かったですが、最近は「動物を通じて人を喜ばせたい」という人が多いですね。ITやバーチャルな情報があふれる時代だからこそ、動物と人を繋ぎ、いのちの温かさを伝えられる人材が求められていると思います。
日本の動物園をもっと楽しく、感動の伝わる場所に

姫路セントラルパーク 浅川さん

動物園・動物飼育専攻卒
飼育員
姫路セントラルパーク 勤務 浅川さん
飼育員は動物に深くかかわることができる仕事です。餌の管理から飼育環境、繁殖、展示手法までを自分で考えてコーディネートできるのが楽しいですよ。後輩には学校の勉強だけでなく、動物に関係のない経験もいっぱいして、その中で幅広い人とのつながりを作って欲しい。それは将来必ず役に立ちます。
動物園・動物飼育専攻について詳しく
粟津
僕は卒業生の中から園長が出て欲しいと思っているんだけど、どうでしょうか(笑)。
浅川
園長より前に、僕はずっとレイヨウの飼育をしてきたので、そろそろ他のタイプの動物にも取り組みたいですね(笑)。海外の会議で知った技術を導入したり、やってみたいことがたくさんあるんですよ!
海道
私も将来的には海外の施設と連携して、野生動物の生息地保全や、希少動物の野生復帰にもかかわってみたいです。
粟津
海外にも目を向けられるのは、いいことだと思います。みなさんには、日本の動物園を変える原動力になって欲しいです。今は、動物園というもの自体のあり方が、変化しているときですから。
浅川
社会教育や、絶滅のおそれのある野生種を守るなど、昔とは違う役割も求められていると感じます。
粟津
そう。動物園は、言ってみれば動物業界のピラミッドの頂点に位置するような所。そこに変化を起こすことが、ペット業界をはじめ、多くの人の動物に対する考え方を変える力になるんじゃないかな。
池内
私は現在サブマネージャーなんですが、園全体をもっと活性化させたいと思っています。まず楽しい発想が生まれる職場にすること。そして自分自身も若手を引っ張りながら勉強を続けて、できるだけ長く飼育員の仕事をしていたいですね。
海道
小さい頃に動物園で抱いた感動を、自分の子どもや孫、そしてその後に続く子どもたちにも、ずっと伝えられるような動物園にしていきたいですね!
粟津
それを実現できる力をみなさんは持っていると思います。そして日本中の動物園に広がる卒業生のネットワークで、動物園業界を変えるエネルギーになれると思います。動物園の新しい時代をつくるみなさんの活躍に期待しています。
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